2025年5月6日に発表されたアメリカの月次貿易統計(輸出入レポート)の結果の解説と、個人的見解を記事にしました。
このレポートは、米商務省 国勢調査局(U.S. Census Bureau)および経済分析局(BEA)が共同でまとめたもので、2025年3月の輸出入データを反映しています。
3月はQ1の決済月であることや、関税の駆け込みに数字が影響された可能性がたかいですね。
✅ちなみに、 なぜ「5月に3月のレポート」なのか?
輸出入レポートは、データ収集と精査に時間がかかるため、通常「約1か月以上遅れて」発表されます。具体的には:
- アメリカは世界中との輸出入の取引数が非常に多い
- 港や通関などを経てから正式な数値が確定する
- その後、官公庁による精査・発表準備が必要
このため、3月分のデータは5月初旬に出るのが通常スケジュールです。
📈 米国の輸出、2025年3月に過去最高を更新!
輸出総額は前月比+0.2%増の2,785億ドル(約42兆円)となり、過去最高額を記録しました。特に「財(モノ)の輸出」がこの成長を牽引しました。
「財」というのは経済用語でよく使われますが、簡単に言うと、モノ・商品の輸出ということですね。なので、海外向けの商品や製品の出荷と捉えると良いと思います。財が有形、物理的なものに対して、この反対語が「サービス」で、無形なものです。
財(モノ):自動車、機械、コンピュータや部品、食品、天然ガス・石油、飛行機、家電製品、農産物など
サービス:旅行、金融・保険サービス、教育、映画・ソフトウェアのライセンス、IT・コンサル等の専門サービス、医療サービスなど

🚛 財の輸出が絶好調
財輸出は前月比1.2%増で1,808億ドルとなり、前月から25億ドル増加、前年同月比では6.8%増で、歴代で2番目に多い数字(1番は2022年7月の1,812億ドル)となりました。
主に以下の品目が伸びました:
- 天然ガス:+8億ドル
- 非通貨用の金(投資目的など):+7億ドル
- 乗用車:+9億ドル
- コンピューター周辺機器:+7億ドル
天然ガスは、ロシアからのエネルギー供給に依存しない体制を整えるためにEU諸国がアメリカからのLNG:液化天然ガスの輸入を拡大させたためです。アメリカはこれを見越して、2024年の12月に、の施設がルイジアナ州のPlaquemines LNGフェーズ1とテキサス州のCorpus Christi Stage 3が稼働を開始して生産能力が拡大しています。
金は、米国株が安定しないので、安全資産としての外国からの購入があったんですかね。乗用車とコンピューター周辺機器は主に中国からの「トランプ関税」の報復関税の影響ですかね、テスラやiPhoneを関税がかかる前に買いたい中国人とか?
民間航空機の輸出が18億ドル減少していますが、これも中国がアメリカの航空機を買うのを辞めたなどがありそう。
ただ、民間航空機の輸出は、受注のタイミングや納品時期に左右されやすいため、単月では大きく変動することがあるので、わりと経済を見るには省きたい数値ではあります。

✈ サービス輸出は一服、特に旅行関連が低調
「サービス輸出」は全体で9億ドル減の952億ドルとなり、やや減速傾向が見られました。
特に大きく落ち込んだのが旅行関連サービス(▲13億ドル)。これは、外国人旅行者の減少や国際観光の回復遅れが影響していると考えられます。カナダやメキシコ、ヨーロッパは、特にトランプ関税の標的になっていたので、アメリカにはもう来たくない!っていう感情が湧いてもおかしくないですね。
一方で、
- 輸送サービス:+3億ドル
- 金融サービス:+2億ドル
といった分野では小幅ながら回復が見られています。
✅ 総まとめ:モノは強いが、旅行は回復途中
- アメリカの輸出全体は堅調で、特にエネルギーやハイテク、自動車が強い。
- 一方で、旅行サービスの落ち込みが足を引っ張る形。
今後の焦点としては、海外からの旅行需要の回復が一つ大きいと思います。今はトランプ嫌いでメリカ嫌いになっているので、そこが落ち着くかどうか。次に、米ドルの価値で、3月時点ではまだ高かったですが、4月はだいぶ減っているので、そこの影響があるかなと思います。
🇺🇸 アメリカの輸入、過去最高の41.9兆円超え!
輸入総額は前月から1.78兆ドル(約27.5兆円※)増加し、過去最高となる4.19兆ドル(約64.8兆円※)に達しました。これは前月比で+4.4%の大幅な伸びです。
※1ドル=155円換算
財(モノ)の輸入も過去最高を記録
📦 主な要因:トランプ政権による新たな関税発表
今回の急増は、予想通りトランプ大統領による「新たな関税発表」で、今後の価格高騰を見越して企業や個人が駆け込みでガンガン輸入たことだと考えられます。
前月比で5.0%増、前年同月比で30.8%増の3,427億ドルに達し、過去最高記録です。
なので、全体の輸入が上がったのは、財の輸入の増加が原因と言って間違いないですね。

輸入が増えた内訳:消費財・原材料・資本財が中心
項目別に見ると、以下の3つの分野で大幅な増加が見られました。
- 消費財(Consumer Goods)
→ 前月比で55.5%増の 1,028億ドル
医薬品、家庭用品、衣料など、一般消費者向けの完成品が中心です。 - 産業用原材料・中間財(Industrial Supplies and Materials)
→ 37.8%増の 746億ドル
金属、化学品、原油など、製造業で使われる材料が含まれます。 - 資本財(Capital Goods)
→ 22.2%増の 928億ドル
企業が設備投資に使う機械、コンピュータ、通信機器などが含まれます。
🛍️ 消費財の輸入が爆発的に増加
💊 医薬品が牽引役
消費財全体で225億ドル(約3.5兆円)の増加があり、特に医薬品の輸入が209億ドル(約3.2兆円)と、ほぼ単独で牽引しました。関税が適用される前に、病院や薬局などがまとめて仕入れた可能性があります。
🖥️ 資本財(生産に使うモノ)も好調
💻 コンピューター関連アクセサリーがけん引
資本財の輸入は37億ドル(約5700億円)増加。中でもPC周辺機器などのアクセサリー類が大きく伸びました。企業が設備投資を前倒ししたとみられますが、これ完全に中国のアクセサリーですよね。
🚗 自動車の輸入も増加
🚙 乗用車が中心に伸び
自動車関連では26億ドル(約4000億円)の増加が見られました。特に乗用車の需要が強く、新車購入を前倒しする動きが出た可能性があります。これは日本、ヨーロッパ、韓国あたりからの輸入となのですが、実際には日本から直接アメリカに輸入しているケースよりも、日本で作った部品をメキシコやカナダに輸出して、そこの工場で組み立ててからアメリカに輸入するケースが多いので、メキシコや カナダからの輸入額も増えています。
こちらは、以下に詳しい記事を書きました。
🏭 原材料系は大幅減少
🛢️ 原油・金・金属製品が減少
産業資材・原材料の輸入は107億ドル(約1.7兆円)減少しました。内容としては、加工済み金属製品、金、原油などが大きく落ち込んでいます。需給調整や在庫過多が背景と考えられます。
✈️ サービスの輸入はわずかに減少
サービス(例:旅行・輸送・金融など)の輸入は1億ドル(約150億円)減少。
- 旅行サービス:-4億ドル(約620億円)
- 輸送サービス:+2億ドル(約310億円)
といった内訳で、海外旅行者の減少が響いた形です。
🧭 まとめ:関税前の駆け込みが数字を押し上げた
今回の記録的な輸入額は、「関税発表」という明確な外的要因によるものです。特に医薬品など価格上昇の影響を受けやすい分野では、“今のうちに仕入れておこう”という行動が数字に表れました。
こうした「外部要因による一時的な輸入増」は今後のデータと比較して分析することが重要です。次回以降の動きにも注目です。
🇺🇸 輸出と輸入の差で、米国の貿易赤字、2025年3月に過去最大の1405億ドルに拡大
2025年3月、アメリカの**貿易赤字(輸入超過額)は1405億ドル(約21.8兆円)**に拡大し、過去最大を記録しました。市場予想の1370億ドルを大きく上回る結果です。
これは、輸入が大幅に増加した一方で、輸出の伸びがごくわずかだったことが主な要因です。
🚢 輸入額、関税前の駆け込みで過去最高に
📦 輸入:+4.4%、過去最高の4190億ドル
アメリカの輸入は前月比で**4.4%増加し、4190億ドル(約64.9兆円)と過去最高を更新。
📤 輸出はわずかに増加も、過去最高を記録
📈 輸出:+0.2%、2785億ドルに
輸出はわずか0.2%増にとどまったものの、2785億ドル(約43.2兆円)と過去最高を更新。
🌍 貿易赤字の相手国別の内訳
アメリカの貿易赤字の拡大・縮小は、相手国ごとにバラつきが見られました。
📈 赤字が拡大した国・地域
- 欧州連合(EU):483億ドルの赤字(前月比+152億ドル)
- アイルランド:293億ドルの赤字(前月比+153億ドル)
- ベトナム:141億ドルの赤字(前月比+17億ドル)
📉 赤字が縮小した国
- 中国:248億ドルの赤字(前月比▲18億ドル)
- スイス:147億ドルの赤字(前月比▲41億ドル)
- カナダ:49億ドルの赤字(前月比▲25億ドル)
➖ メキシコとはほぼ横ばい
- メキシコ:167億ドルの赤字(前月とほぼ変わらず)
🌍 3月ならではの影響要因は?
3月は、季節的にも経済的にもいくつかの影響があります:
① 年度末の駆け込み需要(特に企業向け)
アメリカ企業は12月決算が多く、目標達成のために12月に多くの売上が上がります。そのため、財の輸出入の場合、初年度は在庫が少ない状態になります。そして、新年度に向けた準備の一環として、3月に売上を確保するための調整や補充を行います。
年末商戦が終わった後、年初の売上を確保するために、3月までに輸出や輸入を増やすという駆け込み的な動きもあります。
また、海外運送に時間がかかるため、12月に注文を受けた商品の取引を3月までに完了させるケースが多い結果、3月末にかけて輸出入が増える傾向があります。
② 天候の影響
北米では1〜2月は寒波や大雪の影響で物流が滞りやすいので、3月になると輸送回復で数値が反発することがあります。
③ 為替の動き
3月は期末要因などでドルが動きやすく、輸出入コストに影響することがあります(ドル高 → 輸出にマイナス、ドル安 → プラス)。なので、為替の見通しが不透明の場合には、在庫確保に動く場合が多いです。
🔍 まとめ:貿易赤字拡大は関税とグローバル需給がカギ
今回の大幅な貿易赤字の拡大は、関税前の特定の国との駆け込み輸入による赤字拡大といえます。
2025年4月に予定されていた医薬品への新たな関税発表を前に、アメリカ企業が在庫を確保するために、特にアイルランドから癌治療薬、インスリン、ボトックスなどの医薬品が大量に輸入されています。
4月は間違いなく輸入が減るので、数字上の貿易赤字は減る見通し。この結果、アメリカ国内に商品の品薄が生じて、インフレという兆候はきそう。
また、政治戦略で中国やEUがアメリカ商品の輸入への対抗策を行ってくる可能性が高いので、大きな発表がない限り5月は輸出も下がりそうだ。